思えば一目惚れってやつでした。

　新しい相棒が欲しいな、と思い始めたのは半年くらい前のことでした。

　長年連れ添ってきた今の相棒がその顔に大きな傷を負いましてね。

　もうそろそろこいつに暇を出してやってもいいんじゃないかと。

　それからはデパートや家電量販店なんかに行く時には時計売場をついでにちょこっと覗いたりしてました。

　腕時計ってのは実に様々なメーカーがあって、さらに様々なデザインがあって、値段もピンキリで、見れば見る程迷いが増えてわからなくなってきます。

　じゃあ、まずは色から検討してみましょうかね。

　現相棒は文字盤もシンプルなブラックフェイスでどんな服装にも合わせ易い。この合わせ易さというのは僕にとって重要なファクターです。かといって今のと同じようなんじゃせっかく新調するのにつまんない。だから今度のは比較的自分の普段の服装に合わせ易いブルーフェイスのものにしてみようと考えました。

　幸い紳士用腕時計にはブラック、シルバーについでブルーフェイスのものもそこそこ出回っている。それでいてブラック、シルバーほど数が多くはないので的を絞り易い。

　そうしてブルーフェイスにしようと決めてからは時計売場で「青いやつ、青いやつ…」と探すようになりました。

　さて、そんなある日のことでございます。

　某デパートの時計売場のショーケース内に「彼」を見つけたのは。

　衝撃でした。

　「青」というよりそれは深みのある「紫」。適度にシンプルなデザインの文字盤。カジュアルさの中にそこはかとなく漂う気品と重厚感。収録中にも気にならない静かな秒針音(重要事項)。そして手の届くお値段(重要事項その２)。

　しかし僕は一目惚れなんてものは信じない男。

　とりあえずその日から選択肢の中にパープルフェイスという項目が加わりました。

　それからは「彼」のことを候補に入れつつも、「ブルーもしくはパープル、ブルーもしくはパープル…」と探し回る日々。

　しかし他の製品で似た色を探してみても、ブルーフェイスはあくまでブルーだし、パープルフェイスというと数は少ないながらやはりこちらもはっきりと明るい感じのパープルばかり。「彼」のような「深青紫」とでもいうような、光の当たる角度によって青とも言えるし紫とも言えるといった微妙な色のものは見つかりません。脳裏に浮かぶのはショーケースの中で独特の存在感を示す彼の姿ばかり。

　そして「彼」に初めて出会ってから約一ヶ月後。僕は再び彼のもとへ戻ってきていました。

　今思えばあれは一目惚れだったのです。

　ビビッ！ときたあの感覚は錯覚ではなかった。

　そして決心し、ついに手に入れました！

　僕の左手にやってきた新しい相棒です！

　こちらの写真では「青」に見えるかもしれません。でも肉眼で見たら違います。ただの青じゃありません。深ーい青紫です。

　すごく気に入ってます。


　長い間僕の左手で時を刻み続けてきてくれた相棒君、本当にありがとう。

　そして新しい相棒君、これからよろしくね。

　明日から外出するのが楽しくなりそうだ♪o(＾▽＾)o